
面白いことに、公然とわいせつ行為をする(刑法第174条)よりも、わいせつ物を頒布したり、販売または販売目的の所持、公然陳列の方が刑が重い(刑法第175条)。例えば、自分でチンコを出してみせるより、他人がチンコを出した写真を見せる方が罪が重い。なぜかというと、チンコを出して見せる行為は「提供される情報が媒体に化体されず、その場限りで消えていく」ので、「わいせつな情報自体には伝播可能な固定性がなく、性風俗の侵害の危険性」は比較すると、チンコを出して見せる行為の方が軽いからだ(横浜地川崎支判平12.7.6)。ストリップショーで踊り子が性器を露出させる(最判昭25.11.21)より、劇場でわいせつな映画を鑑賞させる(大判大15.6.19)方が罪が重い。わいせつな会話を録音して複数の客に聞かせた(東京地判昭30.10.31)方が、生でわいせつな会話を聞かせる方より刑は軽い。なので、チンコの画像データの方が本物のチンコよりも罪が重くなる。デジタル情報の、それこそ01010101の羅列が、本物のチンコよりも重い罪、そして自分のチンコより他人のチンコを見せる方が重い罪、ハッテン場だったら、チンコ丸出しのポスターの方が、実際チンコを出して立っている生身の人間よりも重い罪ということになる。伝播可能な固定性があるからね。生きてもなければ動きもしない、勃起もしない平面のチンコの方が罪深い。文章も、録音テープも、ハードディスク(東京地判平8.4.22)だって本物のチンコより罪が重い。本物のチンコよりもハードディスクの方がわいせつなのだ。あんな四角い箱に本物のチンコがいやらしさでは負けている。本物を超えたわいせつ、わいせつってそもそも本物を超える?わいせつという想像上のいやらしい概念が独り歩きをしている。
- 関連記事
-
- 刑法上のわいせつ(3)
- 刑法上のわいせつ(2)
- 刑法上のわいせつ(1)
- なぜわいせつが悪いのか(3)
- なぜわいせつが悪いのか(2)
- なぜわいせつが悪いのか(1)
- そもそもわいせつとは何か(4)

[PR]
