
また、わいせつというのは社会や時代によって時々刻々と変化していくものであり、価値観の多様化している今日で刑罰による道徳の強制が妥当なのかという少数説もある。ただ、実務では、陰毛は従来取り締まりの対象であったが、90年代初頭に警察の取り締まり方針が「ヘア解禁」に変更になって摘発されなくなった事例もある。また、国家による道徳の強制を排除する観点から、わいせつといった性的な意味を持つものや行為を見ても、それが成人の自由意志に基づく場合は害を受けることがないのだから、それを欲しない人の目に触れさせてその人の性的感情を害するならば処罰の対象にすべきという説もある。この場合の「公然と」というのは「不特定または多数人が意図せずとも認識してしまう状態においてという意味に解している。青少年については、欲す欲しないにかかわらず、過剰な性的信号によって性欲に関する自己コントロール能力が未発達であるから、将来のためにも遮断する必要があるだろう。欲しない自由というのは、不本意に性欲を刺激・興奮させられない自由であり、性欲に関する自己をコントロールする権利である。ハッテン場という形態はゲイ固有のカルチャーであって、股間を手で隠すというルールであるということを了承した上で入っている。わいせつではあるが、互いにそれを欲して入っているわけで、性的感情を害しているわけではなく、仮に害しているならば自由意志で退場できる。例えば、ストリップショーもハッテン場も、客の年齢確認をしているし、18禁のルールもある。不特定多数の青少年が見る機会もなければ、見たくないという成人も見る可能性がない。だからわいせつ罪は成立する余地がない。一見妥当なように思えるが、これも少数説だ。
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