
1994年12月、厚生労働省は「同性愛はいかなる意味でも治療の対象とはならない」という国際基準を採用した。それまでは、同性愛というのは「異常」「倒錯」「変態」で治療の対象であって、同性のヌード写真を見せられて勃起しなくなるまで電気ショックを与えられるなどの荒治療を行っていた。病気ではなくなった、では、同性愛はどうやったら「治る」のか。同性愛というのはつい数年前まで面白おかしくメディアで採り上げられていた。お笑い芸人がオカマに扮してネタをやっていたし、「ホモ」という差別用語がピーで消され、あざ嗤われるキャラクターとしてオネエタレントが重用された。同性愛を「治す」ために施設に入れられて、カウンセリングという名の集団心理を利用した催眠療法、男女を共同生活させてディスカッションさせ、同性愛は不自然だという結論でセックスさせる自己啓発セミナー、信心を深めて同性愛を罪として信仰に目を向けさせる宗教、お金がいくらあっても足りないくらい、「治療」できなくなったゲイはゲイを「治す」ためにいろいろな手段を試みた。また、内省的にも「ゲイを止めるにはどうしたらいいか。」「幸せな家庭生活を送るために足を洗いたい」「社会不適合者だ。」と人知れず悩み苦しんだゲイも数多かった。ゲイは病気ではない、しかし、社会がそれを許容するには相当な時間を要し、数多くのゲイがもがき苦しんだ。ハッテン場は、そんな未来に見通しが持てないゲイの溜まり場で、虚無主義と刹那主義の入り交じった、一夜限りの社交場だった。
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