
次はエイズの話をしなければならない。エイズ、今でこそHIV感染であれば、恐れるに足らない。しかし、フレディ・マーキュリーがエイズ死を遂げ、マジック・ジョンソンがHIV感染を公表したのが1991年、そしてゲイでありエイズに感染しているということを平田豊(PN)が勇気を出して公表したのが1992年であった。1980年代、エイズは「乱交的なセックスを行うアメリカのゲイの死の病」であり、日本には関係のない、対岸の火事のような認識であったが、90年代に入るとエイズパニックが起こった。というのも、平田豊は1994年5月に死去するのだが、ゲイのエイズ患者として壮絶死を遂げる過程をドキュメンタリー番組としてテレビで放映し、自伝を出版した。「エイズが蔓延したのは、道徳観が崩壊したためではない。エイズを知らず、無防備にセックスしたことが原因なのだ。」と彼は言っている。無防備にセックスをしたのはどこで誰となのか、「道徳」とは何か。無防備にセックスをしたのは特定の相手か、それとも不特定多数か。彼の発言は一つ一つ含蓄があるが、一方で抽象的な曖昧さがあった。そこから憶測が不安となり、恐怖へと変質していった。
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